地域ケア会議の参画・参入の取り組み

地域包括ケアシステムは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができることを目的とした医療・介護などが一体となったシステムです。

具体的には、住まい・医療・介護・予防・生活支援となります。

特に、今後認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも地域包括ケアシステムは重要と認識されています。

地域包括ケアシステムでのサービス提供体制は、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・介護支援専門員、その他の専門職(はり師・きゅう師も含まれる)の積極的な関与のもと、利用者(患者)の視点に立って構築されるものです。

多くの職種の多くの方々が関わることになる「地域包括ケアシステム」においては多職種(他職種)との連携が必要不可欠です。

鍼灸師は、「医療・予防・住まい」で地域包括ケアシステムに関わることが可能と思われます。具体的には「鍼灸医療・介護予防・訪問鍼灸」などです。

しかし、その内容(ニーズ)は地域事情に合わせて各自治体が決めることなので、地域行政の事情などにより異なります。また地域の鍼灸師会の事情も勘案しないといけないことから、一律の手法でアプローチができる性質のものではありません。

地域包括ケアシステムに参入には、地元の地域ケア会議や担当者会議に参加することが有効です。その他の専門職として参加可能であることを地域包支援センターに認知してもらうこと、また各市町村の「高齢者福祉課」(市区町村により名称は異なります)や地元の地域包括支援センターに出向くことが大切です。

地域ケア会議や担当者会議に積極的に参加して「地域包括ケアシステム」に参入し、地域社会に貢献する鍼灸師会・鍼灸師になるような活動をしていきましょう。

公益社団法人東京都鍼灸師会副会長 松浦 正人

【葛飾支部地域包括ケアシステム参入の取り組み】

葛飾支部 「介護予防運動とツボ体験教室」の報告

葛飾支部では、平成27年11月14日(土)14:30~16:00 地域包括支援センター堀切が主催する小菅憩い交流館での「オレンジカフェ」にて、介護予防運動とツボ体験教室を開催しました。参加スタッフは、葛飾支部からは小林先生と私、足立支部の金子桂子先生、墨田支部の川井大輔先生がご協力して下さり、合計4名でした。
当日は、小雨の中どれくらいの人数の方が来てくれるのか少し不安になりましたが、25人の方の来場でほぼ満席の状態での開催となりました。

教室の話をする前に、「オレンジカフェ」について少し説明させて頂きます。これは、地域包括支援センターが、月に1回主催している高齢者、介護をする家族、介護に携わっている方、地域の方々のためのコミュニティーの場です。今回の教室は2回目で、10月に行った堀切のカフェが好評を頂いた結果、小菅地区でも開催の運びとなりました。「オレンジカフェ」は憩いの場なので、運動やツボ体験を通じて利用者さんとふれあい、鍼灸師を身近に感じていただけることを目標に行いました。

教室の進行は、最初に、利用者さんに自己紹介をしてから、介護予防運動です。小林先生が運動の説明を行い、私が運動を担当し、金子先生、川井先生は、周囲の方々への声掛けや運動の仕方を見ていただきました。運動の内容は、ストレッチ4種目、筋力アップ運動5種目で、25分ほどの運動でしたが利用者のみなさん笑顔で最後まで運動ができました。

その後、ツボ体験教室です。前回の教室では、糸状灸も行いましたが、今回は、施設の事情で火は使えないとのことで、身近にあるものを道具として体験して貰うことにしました。ツボ教室のはじまりは、司会の小林先生が日鍼会のパンフレット「家族みんなで、鍼と灸」を使って、鍼灸講話をした後、お湯を入れたペットボトルを利用者さんに配り、ツボの効能を説明しながら、大椎や手三里、足三里を温めます。「温かい」、「気持ち良い」、「ホッとする」などの喜びの声が、あちらこちらから聞こえてきます。

温灸の後は、かっさです、腕や顔、頭など、段ボール製のかっさで、皮ふを接触刺激します。またローラー鍼なども紹介しました。顔や腕を刺激して血流がよくなったのか、顔に赤みが出てきた方が何人か見受けられました。ツボ体験が一通り終わったあと、利用者さんから「私は、足がつって困る、何か良いツボはないですか?」「耳鳴がある」「膝が痛い」「肩がこる」「よく眠れない」「先生は、どこで治療院をやっているの?」「鍼でこの症状治るのかしら?」などちょっとした医療相談コーナーになり、運動のやり方やツボの位置、養生の仕方、医師の受診をすすめたりして、4人のスタッフが忙しく対応しました。

利用者さんが自分のお困りの症状を私たちに相談する様子を見て、鍼灸師の我々に信頼を置いてくださっているのだと感じ、鍼灸が地域ケアで活躍できる可能性を確信し無事に教室を終えることができました。

報告者 葛飾支部副支部長 小口政博

【豊島支部の取り組み】

豊島区においては平成27年度第1回東部地区懇談会(巣鴨・南大塚地区)として、平成27年10月7日(水)10時~12時に初めての地域ケア会議に参加要請があり参加いたしました。

出席者は主催者側として豊島区歯科医師会、アゼリア歯科診療所、巣鴨警察防犯課、認知症対策G、生活福祉課保護三係、社会福祉事業団、東部包括支援センターの代表者と各地域の町内会会長、各老人クラブ代表者、ディケアサービス事業者、眼科医、薬剤師、歯科医師、看護師、保健師、民生委員、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー(MSW)、コミニュティーソーシャルワーカー(CSW)など地域に密着されている方々でした。

私は地域開業鍼灸師として出席いたしました。当日は50名の参加者で盛況でした。尚次回は平成28年2月25日(木)13:30~南大塚文化創造館にて行われます。

26年度東部地区懇談会の振り返りのあと懇談会に移りました。懇談会は「高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けるために」をテーマに

  1. 地域を知ろう!(30分):まちのデーター・高齢者総合センターの取り組みから
  2. グループ討議(25分):サブテーマ「私たちのまちはどんなところ」として
    • データー見て気づいたこと、感じたこと
    • 生活・仕事をして気づいたこと、感じたこと
    • まちの強みや弱み等

1グループ8名・5グループで討議してそれぞれ発表しました。

26年度の振り返りは

  1. 地域のよいところ:交流が盛ん、イベントが多い、町会同士仲がいい、商店が多い、利便性が良いなどがあげられ
  2. 地域の不便なところ:高層マンションが多く、交流が少ない、坂や幹線道路があり他地区と交流しにくい、個人情報が得にくい、個人商店が少なくなったなどがあげられ
  3. 地域にあったらいいと思うもの:介護保険制度の充実、買い物支援、移動販売、高齢者の社会資源マップ、支援を必要としている人をリストアップ、ご近所の見守り、コミニティバス、交流の場などがあげられていました。

この振り返りの事象をみて私が地域住民としてまた開業鍼灸師として何が出来るかを考えました。

東京都鍼灸師会では平成21年より豊島区から受託「筋力アップ教室」を開催しまた継続して筋力アップ運動を希望する方の受け皿として25年10月より豊島支部主催「元気でイキイキ教室を立ち上げました。参加者は両教室で延べ約400人になります。

健康余命の延伸・不健康余命の短縮には生活習慣、心理面、体力、身体機能、各検査値などが重要な要因になります。教室参加者は週1回、隔週1回お会いできるのでコミニユケーションが図れ対応ができます。

東京都で振り込め詐欺撃退のための「自動通話録音機」無料で貸し出す機会を知りました。この事を「筋力アップ教室」・「元気でイキイキ教室」でご案内いたしました。参加者53名中12名の方が希望されましたので豊島区総務部 治安対策担当者と面談の上12台一括で借用して参りました。利用者側の負担は年間電気代323円程度のみで後は何もありません。各教室開催時に希望者に貸与して設置していただき詐欺撃退の一助になればと思います。

鍼灸は「地域ケアシステム」のなかで、特に重視される【医療】【介護】【予防】【住まい】【生活支援】に関わり生活を支援することができます。

【医療】鍼灸施術による痛みの管理、随伴症状の緩和、QOL・ADLの向上が期待できます。また、疾患により医師の同意書を得て保険治療ができます。

【介護】施術前に血圧・脈拍などのバイタルチェック、主訴、医療面接などを通じ必要であれば医師に報告しアドバイスを受けることができます。職業柄傾聴スキルも持ち合わせているので多様なご相談に対応できます。

【予防】「鍼灸師」としてまた地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都老人総合研究所)認定「介護予防運動指導員」として老年症候群・骨折などで寝たきり予防のために筋力アップ運動を通して転倒予防・低栄養・尿失禁・高齢期うつ・認知症などに対応できます。

【住まい】鍼灸師は往療・医療面接を通して住まいの状況が確認できます。玄関、廊下、トイレ、浴室などに手すりが必用なのではないか?敷居の段差が高すぎるのでは?等をチェックでき、また本人の要望も拾い上げることが出来ます。介護保険適用範囲のアドバイスをすることができます。

【生活支援】独居高齢者への鍼灸施術・教室参加状況などで安否確認ができ万一の時は地域包括支援センターに連絡を取り対応できます。またシルバー人材センター・リボンサービス等の積極的活用を促し生活支援のアドバイスができます。

今私達が出来る事は地域住民として支援出来る事を考え地域高齢者を見守り姿勢の傾注と考えます。行政・町会・多職種と連携するためにはお互いの「顔」が見えることが大事です。

日常活動を地道に継続的にしていれば自然に鍼灸師としての仕事が増えると考えています。

公益社団法人東京都鍼灸師会 豊島支部 武内 潔